七夕の夜、みなさんはいかがお過ごしでしょうか?
織姫と彦星が、年に一度だけ逢瀬する夜。
占い師として、私はこの七夕の夜、みなさんに素敵な恋をしてもらいたいと願いが募ります。
これからお話しするのは、ある二組のカップのお話です。
少し長くなりますが、お読みいただきたいと思います―。
「私と彼って、どう見えますか?」
A子は私に聞いてきました。
プライベートで交わされるこういう質問、実は私、一番嫌いなんです。
この場合、予め答えを匂わせていますよね?
「いい雰囲気に見える」
が彼女にとっての正解の回答なんでしょう。
「結構みんなから『付き合ってるの?』って聞かれるんですけど、まだ付き合ってないんですよ。どう思います?」
どう思いますって、私にはそんなふうに見えないんですよ。
何も特別なものを感じない、ごくごく普通の人間関係にしか見えなんです。
「まあ、男と女の事だから、悪くないんじゃない?」
これが私の出した、A子を傷つけない精一杯の返答。
「ですよね。まあ、向こうもそう思っているみたいで、割とよくうちに来るんですよ。」
なるほど、これが言いたかったんですね。
「彼女と別れたばっかりっていっても、まだ家の契約残ってるから彼女とは一緒に住んでるんでしょう?」
その男性、B男は最近彼女と別れたばかりなのです。
「そうなんですよ。だからどうなのかなぁと思って。」
プライベートでもこのての相談は多いんです。
占い師だと知ってて聞いてくるからたち悪いです。
付き合い上断れないので、私の個人的な常識の範囲で判断してお答えするようにしております。
「そもそも、彼の本心はどうなのかな?」
呟くように私は言いました。
この言葉が出たのには訳があるのです。
実はですね、そのB男と元々仲が良かった女の子、C子から以前一度だけ恋愛相談されていたんです。
当のB男からも、直接、彼女と暮らしているものの、最近一緒にいてもキツイってことも聞いていました。
とはいえ、男女が一旦一緒に住んだなら、何があってもケジメはつけないと、一緒に住んでる女性は納得しませんよ。
となると、甘い期待はできません。
その女の子の恋愛相談には、可愛そうでしたが、今は自分の気持ちを彼に伝えない方がいいことと、一緒に住んでる女性から奪おうとしない方がいいとアドバイスしたのでした。
それからしばらくして、C子には彼氏ができ、なんとその数日後に思い人であった男性から
「一緒に住んでいる彼女と別れた」とLINEが来たというのです。
まさかの少女漫画的展開!
どうして人はこうすれ違うのでしょう?
ほんの数日、C子が告白されるのが遅ければ、きっと彼女はもともと好きだったB男とお付き合いする方向に向かっていたでしょう。
ところがボタンの掛け違いのように、それぞれの気持ちを置き去りにしながら、時は過ぎていったのです。
C子は、
「こんな自分を好きになってくれるなんて、なんだ有り難い人なんだろうと思って。それに、彼氏が出来れば忘れられるかな?って思って。」
そう言ってました。
でも実際は、数週間もしないうちに、お互いの価値観の溝ができ始めていたのでした。
相手をよく知らないうちにお付き合いが始まってしまった時によく陥る溝です。
掛け違ったボタンは元に戻らないのか?
「上手くいかないもんだないぁ。」
そんなすれ違いのカップルを見て私は独り言をつぶやいていました。
「あの二人ですか?」
と聞いてきたのは、冒頭の匂わせ女子、A子。
ただ、この時点で私は、彼女がただの匂わせ女子だと思っていたのです。
「うーん。あの二人、付き合ったばっかりなのに、なんか距離を感じるんだよね。」
「ああ、わかります。私もそんな感じしてたんですよ。」
「なんだろうね。みんな上手くいかないもんなんだろうかね。」
私はまた、呟くように言いました。
「え?みんなって、どこまで知ってるんですか?」
「どこまでって、たいして知らないよ。」
私は彼女に探られているようで、言葉を濁しました。
すると彼女は突然こう言いました。
「そうなんですね。でもその話、誰にも言わない方がいいと思います。」
どういうつもりだろう?
もちろん誰彼構わず言うつもりはありませんでしたが、なぜわざわざそう言うのだろうと。
思案していた私の耳に、次に飛び込んできたのが
「ところで、私と彼ってどう見えますか?」
という言葉でした。
彼というのは、そう、B男です。
迂闊でした。
全くのノーマーくでした。
まさか、今自分の目の前にいるのが、『匂わせ女子』ではなく、『匂わせあざと女子』だったとは!
A子は、B男とC子は良い雰囲気と知っていたんでしょう。
それでは、C子が自分の邪魔になるから、予め私に黙ってろってことなのか!と悟りました。
参りました。すっかりペースに巻き込まれました。
とはいえ、これでは恋愛ではなくゲームみたいじゃないですか。
やっぱりね、恋愛は本当に好きな人としてほしい。だからこそ
「そもそも、彼の本心はどうなんだろう?」
という言葉が私の口をついたのです。
B男がしょっちゅうA子の家に遊びに来てると言っても、自分の家には別れたはずの彼女がいるんだから、都合よく居場所を作ってるんじゃないか?
そう思っていたのですが、そんな私の考えとは裏腹に、返ってきた言葉は意外なものでした。
「向こうからはもう既に言われてるんです。」
「言われてるって、もしかして好きだって?」
「まあ、そうです。」
これが言いたかったんでしょうね。
本当にそう言われかは疑わしいですが・・・
「でも、まだ付き合うかどうかは・・・みんな付き合っちゃえばいいじゃんって言うんですけど、どう思います。」
策士です。私も外堀に使おうとしてるんでしょうね。
「とりあえず、しばらく様子を見る必要はあるんじゃない?別れたとはいえまだ元カノと一緒に住んでるんだから。」
「そうですね!契約更新まであと2か月だっていうから、それまで待った方がいいってことですよね?」
A子の暴走を止めたい一心で返答しました。
ああ、これで少しは流れを食い止められるだろうか?
2か月あれば事態は変わっていくだろうか?
好きな人の為を思って身を引く女の子と、
自分の幸せの為に他人を巻き込む女の子。
どっちが正しいという事ではないんですけどね。
なぜ私がこんな記事を上げてたのかというと、
本当に幸せな恋愛をしたかったら、駆け引きは無用だってことを言いたかったんですよ。
それから4か月ほど経ちました。
5月からお付き合いが始まったと、『匂わせあざと女子』A子から報告をうけました。
無理やり言わせたんじゃないかと、私は勝手に想像しています。
その二人のお付き合いが始まったころから、日に日にB男は物思いにふける様子が増えたような気がします。
このまま結婚のキーワードが浮上しそうな雰囲気です。
更に外堀埋められて、そのままゴールなんて結末になるんでしょうね。
「遊びで付き合ってれば良かったのにね。」
私が一言だけそういうと、彼は自分の後悔に苦笑していました。
もう一組のC子のカップルは、お互いの溝が深まるばかりであるものの、男性の方が分かれに応じないようで・・・
同じ時期に2組のカップルが成立したのに、どっちも幸せそうじゃないのって悲しいですよね。
引き返すチャンスはまだあると思うのですが、恐らく引き返さないでしょうね。
占いで、相談に来る既婚者の殆どがこういった経緯がある方が多いんです。
ご主人の愚痴から始まり、自分の事はもう好きじゃないんじゃないかと聞かれたり。
そこをほじくり返しても、感情的になるだけなのでお答えはしませんが、関係を修復するよりは、今後ご本人の気持ちが軽くなる選択を案内します。
その中には、離婚に至る場合も含まれています。
一つの家庭がバラバラになる。
そんな辛い事態にならないで欲しい。
そういう思いが募る七夕の夜です。
どうかお互いを思いやる気持ちが、よくや嫉妬に邪魔される事なくお互いを引き寄せ合うように。
天の川に願いを込めて。