2022年5月15日日曜日

苦しい


知人、友人、恋人、家族、親しい人の自死に直面した時、


「なぜ、もっと話を聞いてあげなかったのだろう?」


と、ご自身を責められる方は多いと思います。


メディアでは、悩みを抱え込まずにお気軽にご連絡くださいと画面に電話番号が表示されます。


ですが、そうじゃないんです。


『悩み』を打ち明ける事が解決ばかりではない事もあるのです。


そもそも、そこに『悩み』があるのかすら本人には定かではない事もあるのです。




実は、私も何度か死の淵を除いたことがあります。


「占い師だから、人の悩みを貰っちゃうんじゃないか?」


と思われる方もいらっしゃるでしょうが、それは違います。むしろそのころは、自分でも順調に行動できていると思っていたくらいですから。


原因は、『過労』と『更年期』でした。


若いころから体力には自信があり、寝不足でも難なく過ごすことが出来るのが自慢でした。

いつも寝つきが良く、数時間眠れれば翌日には元気に仕事をしていました。

それがあるころから、徐々に眠りにつくことにプレッシャーを感じるようになっていったのです。


いつの間にか「眠れない」が口癖になりました。


今に思えばその頃から自分の言動がおかしくなっていってたと思います。

そしてついに、諍いの最中、自ら刃物を持っていました。

数日後のある朝、仕事に行く為に出かけようとしてガタガタ震え始め、その場に崩れ落ちそうになった体を支えられた時、「病院に連れて行って」と泣きながら訴えていました。


それから緊張の糸が切れたように、自宅でほぼ寝込んだような生活が続きました。

生きていることへの苦しみに襲われながら、投薬と自宅療養する日々。


どうやったら人に心配や迷惑をかけないで死ねるかだけを考えていました。


失敗もできない。ちゃんと死ななければならない。死体の始末も死後の始末も、他人に迷惑をかけてはならない。


きっちり死ぬにはどうしたら良いか?


結果、私には『完璧な自死』の計画は立てられず、諦めて『爆買い』に走りました(笑)




その後、セカンドオピニオンで良い先生に出会い、緩やかに回復し、仕事へも復帰し、ほぼ日常を取り戻しました。


自ら病院に行きたいと言って治療に至ったのは、仕事柄、沢山の方にお会いし、客観的な意見を言う経験をしているお陰でした。


2度目に『自死』の衝動にかられたのは、『更年期』の症状が顕著になってからでした。


毎日『倦怠感』に襲われ、仕事を休みがちになり、何もかもに自信を無くし、ベットの中でうずくまりながら、再び「死にたい」と呟いていました。


医師に相談しても、「年齢的なものだから」と解決策は見出されず、言葉にならない苦しみにもがきながら悶々とした日々を過ごしていました。


幸いに、ある方法で更年期の『倦怠感』を克服し、今はまた平穏な日常を取り戻していますが、心の中ではまだ、あの時の苦しみによる恐怖が鮮明に残っていて、またいつあのような事が起こるのか?という不安は消せないままです。


このように、『自死』を意識するのは特段大きな『悩み』だけではないのです。


普段ならあまり気にも止めない疲れや睡眠不足、体調の変化などでも『心』に大きな変化をもたらすのです。


そしてそんな時は、どんな方法も全て逆効果になってしまうのです。




もちろん、誰かに話を聞いてもらいたいと思う事もあります。


孤独を感じていますから、誰かに聞いてもらいたい。甘えたい。背中をさすってもらいたい。という気持ちが湧き上がります。


ただ、話をしたいと思っても、どうしても躊躇してしまうのです。


気持ちが沈んでいるため、自分の話を聞いてもらえるのか?忙しくて相手にしてもらえないのではないか?聞いてもらって理解してもらえるのか?厳しい意見を言われるのではないか?


そう思うと話そうにも声が出せなくなるのです。


ですから、そんな時に無理に話を聞かれたり、励まされるのも当人にとってはつらいものになります。


よく、「頑張ってって言ってはいけない時がある」といいますが、それは「頑張って」だけではないのです。


「早く良くなってね」

「そのうち元気になるよ」

「気楽に考えようよ」

「落ち込んでばかりいないで、楽しいこと見つけよう」

「たまには外に出て、リフレッシュするといいよ」


どれも、思いやりのある言葉ですが、意外にも心が沈んでいる時にはその言葉が矢のように突き刺さり胸を痛めるのです。




今まで良かれと思って声をかけた方にとってはとてもショックなお話ですよね。


けど、残念ながら、何らかの原因で心が沈んでしまった時は、当たり前の事も、当たり前に受け取れない事があるのです。


私は、経験上、専門家に委ねてよかったと思っています。


精神科医やカウンセラーは患者にとって『合う・合わない』はあるかと思います。

それでも、自分にとって『心』を委ねられる専門家に出会う事で、症状は改善されることは期待できます。


日本は、心理セラピーについては、かなりマイナーであると言えますが、様々な研究が進み、有効的な心理療法は数々登場しています。


精神科やカウンセリングに通う事は決してネガティブではありません。


言葉に出来ない『辛さ』や『苦しみ』を感じたり、または、身近な人が気落ちしている状態が長く続いているのに気が付いたら、専門家に足を向ける事をおススメします。


あなたや、あなたの大切な方が、これからも健やかに過ごせることをお祈りします。


そして最後に、浮世より先に旅立たれた方々のご冥福を、心よりお祈り申し上げます。